あっぷる de アート「モデルはご機嫌ななめ」
少女がモデルの絵は幾つもありますが、今回は膨れっ面少女の登場です。
本作は1878年パリ万博に出品拒否された代物。
青いソファーの塗り方が雑と思われた!?(方向もバラバラではみ出ている)
モデルのポーズがフォーマルっぽくない!?(足開いちゃってるしね)
「もうやだ!飽きちゃった」と女の子の声が聞こえてきそう・・・
作品名:青い肘掛け椅子に座る少女
製作年: 1878年
サイズ:89.5×129.8cm
所蔵 :ワシントン・ナショナル・ギャラリー
作者 :メアリー・カサット(米) 1445~1510
本作の魅力はモデルの自然体過ぎるまでのポーズ。
いや、ポーズをとるのに飽きた様子を切り取ったのが魅力♪
この子の前に立つと「分かる分かる!じっとしてるの苦痛だよね」って声掛けたくなりますよ。
(来日の際、本作の前でフフッと口元が緩む方も)
モデルの少女はエドガー・ドガ(踊り子の絵で有名)の知人の娘で、黒っぽい犬もドガが調達。
カサットはこのワンコをドガから貰っています。(テリアかと思ったらグリフォン犬♪)
手直しされた本作はドガの誘いで第4回印象派展に出品。(何とドガも加筆!)
何処を変更したのか!?赤外線画像により解き明かされたのは・・・
ドガは水平線だった床を変更。
これによりカサットは右奥のソファの位置も変更~。
結果的に奥から広がる画面に少女の広げた足。
ワンコは横で眠るだけなのに良い仕事してます♪
(ソファ前に移動したけど元通りに)
カサットの元の境界線 (実線)、ドガの改変 (破線)、
および犬の別の配置 (円) を含む赤外線反射図合成
出典:www.nga.gov “ Little Girl in a Blue armchair ”:A Closer Look
やたらドガ繋がりなのも当然、メアリー・カサットはドガの影響を強く受けた画家です。
ショーウィンドウにドガ作品を見て釘付けになったカサットは、「人生が変わった」と言っています。
ドガの方でもカサットの作品を前に「自分と同じ感性の人がいる」と言ったそう。
互いのアトリエは歩いて5分。仲良しカップルかと思いきや、そうはならなかったようで・・・
皮肉屋で完璧主義者のドガはカサットにも辛辣。
(画家の作品批評って普通の事だけど、ドガって口が悪過ぎて他とも揉めたの)
それでも負けずに描き続けるカサット・・・ドガからパステル画や版画を吸収し共に追求。
印象派に影響を与えた日本ブーム(ジャポニスム)はカサットの作品にも♪
この版画を見たドガは「女性にこれほど見事な素描が出来るとは!認めたくない」と絶賛。
(たまに褒めても女性蔑視がちょいちょい・・・昔の事とはいえ)
口論から数ヶ月会わない事もありつつ(周りには痴話喧嘩に見えた!?)生涯を通じて交流。
カサットはコレクターにドガの作品を勧めてもいます。
(現在、米国の収蔵先があるのは、カサットが『印象派推し』したお陰ね)
製作年:沐浴する女性
製作年:1890~1891年
サイズ:36.4 x 26.8 cm
所蔵 :メトロポリタン美術館
作者 :メアリー・カサット(米) 1445~1510
ジェンダー問題なんて考えられなかった時代、それでも先輩・先人から学んだカサット。
1904年にはレジオンドヌール勲章を受けました。
数々の温かい母子像や少女を描きましが、ママにはなっていません。
晩年、目を患い描けなくなったカサットは女性参政権の運動を支援しました。
画家になるまでの道程を思えば、常に闘っていた筈・・・(仏の美術学校は女子が入学出来なかった!)
優しい画風とは別に誰かを応援する強さまで秘めた画家だった様です。
作品名:母と子 (昼寝から起きた子)
製作年:1899年
サイズ:92.7 x 73.7 cm
所蔵 :メトロポリタン美術館
作者 :メアリー・カサット(米) 1445~1510
*おまけ*
カサットとドガはブルジョワ出身(親は金融業)、生涯独身、視力を失う所まで共通。
ドガの死後、ドガの手紙をカサットは全て焼却。(えぇっ!手放せない気が〜)
友達?恋人?闘う同士!?二人のことは二人の中だけに・・・でしょうね。
参考資料
パンフレット「Degas / Cassatt」Kimberly A. Jones : National Gallery of Art , 2014.
https://www.nga.gov/content/dam/ngaweb/exhibitions/pdfs/2014/degas-cassatt-brochure.pdf
“ Little Girl in a Blue armchair ”:A Closer Look
https://www.nga.gov/features/degas-cassatt/little-girl-in-a-blue-armchair.html