あっぷる de アート「村人達が密です」
子供達が『わちゃわちゃ』しています。
俯瞰図のような視点、透視図法の建物、細かさが特徴で楽しい間違い探しのようです。
(絵本にも、すごく細かく描きこまれたものってありますよね。)
本作には何と80以上の遊びが描かれているのです。『百科事典的絵画』とも言われます。
作品名:子供の遊戯
製作年:1560年頃
サイズ:118×161cm
所蔵 :ウィーン 美術史美術館
作者 :ピーテル・ブリューゲル(父)(ブラバント公国–現オランダ)1525-30頃~1569
一見、地味な色調ですが、子供達の服に赤や青を点在させ、視線を様々な遊びに誘ってくれます。
少し見ただけでも、車輪転がし、馬跳び、柵乗り、逆上がり、コマ回し、結婚式ごっこ、ミサごっこ等をする子供達が分かります。
(何と!『ツンツン混ぜ混ぜ』している子まで・・・親がやって欲しくない事をするのが子供よね。)
一人の主役がいるのではなく、それぞれが好き勝手に遊んでいます。
『子供の仕事は遊び』だと言わんばかりです。
どんな遊びがあるか、お子さんと眺めるのも楽しいですよ♪
次は、村人達が『わちゃわちゃ』している一枚。
俯瞰図のような視点は変わりません。
それぞれがコミカルな動きをしているようで、実は毒気を孕んでいます。
それぞれがコミカルな動きをしているようで、実は毒気を孕んでいます。
作品名:謝肉祭と四旬節の喧嘩
製作年:1559年
サイズ:118×164.5cm
所蔵 :ウィーン 美術史美術館
作者 :ピーテル・ブリューゲル(父)(ブラバント公国–現オランダ)1525-30~1569
まずはキリスト教の行事の流れをざくっと簡単にまとめますと・・・
謝肉祭:カーニバル(禁欲期間前のお祭り、無礼講、どんちゃん騒ぎ)→
四旬節:レント(愚行を悔い改め、節制・肉絶ち・慈善)40日間→
復活祭:イースター(イエスの死からの復活を祝う)
(何だか順番が違うような気もしますが・・・我慢が先か、お祭りが先か?!
大暴れしちゃってから悔い改めるのね。)
大暴れしちゃってから悔い改めるのね。)
『謝肉祭と四旬節の喧嘩』は風刺的寓意画として知られます。
画面下の中央で向かい合う二人にご注目。擬人化された謝肉祭と四旬節が睨み合い。
お祭りでご馳走を食べるのですから、左の酒樽に跨って、串に刺さった肉(しかも豚の丸焼き!)を
持っている男性が謝肉祭を表しています。
篭をかぶり、魚を2匹のせた長い柄を持っている、痩せた人物が四旬節となります。
そのまま夫々の周囲も、左側が謝肉祭、右側を四旬節として、200種以上の行事等が描き込まれています。
対比させて描くことでピーテル・ブリューゲルは人間の愚かさを表現しています。
同じ人間が散々浮かれ騒いだ後、真逆の節制生活。
その変わり様に眼差しを向けたのです。
(信仰心そのものを問うているのなら、とてつもなく先を行く考えの持ち主だったかも・・・。)
画面のあちこちに困窮者(足の不自由な者や物乞い)が描かれています。
まるで風刺の代弁者の様に画面にいるのです。
また本作は描かれた当時の時代背景から、混迷にあったカトリックを四旬節、
プロテスタントを謝肉祭として宗教対立を描いたとする説もあります。
ピーテル・ブリューゲルの作品は細密に描きこんでいるので歴史資料でもあり、風俗画の一面も併せ持ちます。
農民達の日々をそのまま描いており『農民画家』と呼ばれました。
長男も同名で画家(地獄のブリューゲル)、次男も画家(花のブリューゲル)ですが、
父が亡くなった時は幼く、絵の手ほどきは受けていません。
それでも画家が非常に多い家系なんですよ。
それにしても、紹介作品の様に人が集まって騒ぐなんて、今は考えられませんよね。
今回の作品のように『わちゃわちゃ』出来る日が来ることが待ち遠しいですね。
どんな時もお子さんの遊び場の1つに『あっぷるはうす』がなれたらと思います。
参考文献:「BRUEGEL」エンツォ・オルランディ 著/岡部絋三 訳