6月 えほんの日
みなさん、こんにちは。紫陽花が見頃を迎えましたね。緊急事態宣言再再延期で悶々とした日々も、紫陽花を眺めていると、気分が明るくなります。
あっぷるはうすも閉館中のため、今月も、ヘレン・オクセンバリーさんの絵本をブログで先行紹介します。
前回の赤ちゃん絵本に続きまして、今回は3~5才くらいの子どもと暮らす家族の日常の、”あるある” を描いた作品です。”ヘレン・オクセンバリーのはじめてのおはなしえほん” シリーズ 「ダンスをならう」「そとごはん」。
表紙をじっくり見てみましょう。1冊めは、舌をペロっと出して元気よく飛び跳ねている女の子。ダンスウェアもタイツもサイズがブカブカ、シューズのひももほどけています。
2冊目は、ドレスアップしたお母さん、メニューを見つめるお父さん。そしてウェイターを見上げるこの男の子、何やらしでかしそうな表情ですね。 どちらのお話もこの後、お察しの通り、とんでもないアクシデントに見舞われるのですが、読み終わるとほっこりとした気持ちになります。それは文章だけによるものでなく、絵からも感じ取れるように、”脱げたシューズを渡してくれるクラスメイト”、”虚しく店をでる妻の肩にそっと手をおく夫” など、オクセンバリーさんの細やかな心遣いや絵の表現力はすごいな、と思います。
そしてもう1冊。
こちらはペットの犬のお話。しっぽをブンブン振っています。どうやらこれからお散歩ですね。お母さんも男の子も長靴を履いています。雨が降っているのかな? いやいや、このワンちゃん、相当ヤンチャです。家族は「トホホ」と呆れながらも、やっぱりうちの犬が一番かわいい。ワンちゃんの所作やとぼけた表情がとても楽しい作品です。
このシリーズの絵本は①~⑨まであり、1983年に ほるぷ出版より、なかむらくみこさんの訳で出版されました。今回紹介したのは、その内の3作が、2014年に岩崎書店より、谷川俊太郎さんの訳で、本のサイズも少し大きくなって再版されたものです。
新訳で注目すべき点は、「ハハ」「チチ」と表記しているところ。”幼い子に向けた本” と、とらえると、違和感を感じる人もいるかと思います。でもこのシリーズの作品は、子ども目線とは別に、大人が共感できるところがたくさんあります。谷川俊太郎さんはご自身の詩や絵本の中でも「チチ」「ハハ」「イモウト」など、同じようにカタカナ表記されているので、谷川さんの思う文学的世界観がこの言葉に込められているのではないでしょうか。それによってこの作品が、”どの世代にも向けられた絵本” になったような感じも受けます。 実際、「ハハ」「チチ」と呼んでいる幼児さんもいるかもしれませんね。 25、6年くらい前に放送された人気テレビドラマ「ぽっかぽか」の “あすかちゃん” もそうでした。あの頃はこの呼び方が一時的に流行りましたね。
ということで今回は、新訳で岩崎書店から再版されたヘレン・オクセンバリーさんの絵本を紹介しました。是非、手にとって読んでみてくださいね。