大阪国際文化協会

あっぷる de アート「蛍の光」

エアコンの無かった時代、人々はどのように夏を乗り切ったのでしょうか。
行水以外は風鈴の音と金魚眺めて夜風を待つのみ!?
浮世絵や美人画には、蛍狩りを楽しんだ様子が残されています。
(蛍狩りは逢引のお誘いにも使われたそうですよ〜)
今回はアートで蛍狩りです。(冷やし飴があったら浸れそう♪)

作品名:蛍狩当風俗 河原崎権十郎
製作年:1860年
サイズ:36.1×22.8cm
所蔵 :ボストン美術館
作者 :歌川国貞(三代目豊国) 1786〜1864

竹に虎という定番組合せの柄が格好良い!
(潜むというより竹を掴んでバリバリ噛んでいるけど)

団扇に書かれているのは「市川の流れを泳ぐメダカかな-紫扇-」
「めだか」の所だけ目のイラストっぽい!これは江戸っ子の洒落!?
歌舞伎役者の目・虎の目・団扇の目。
役者は蛍を眺めて、団扇の目は虎を見て、虎はこちらを睨んでいる〜目が離せない技あり作品!
こちらは複数バージョンあり、当時の人気歌舞伎役者が勢揃いといったところ。
浴衣の柄も龍・鷹・鳳凰など楽しめます。

江戸末期になると、安くて鮮やかな人工顔料が輸入される様になり浮世絵も色鮮やかになりました。
『広重ブルー』や『北斎ブルー』と呼ばれる色はベロ藍。
明治の錦絵ではアニリンの鮮やかな赤が多用され、『赤絵』と呼ばれる様に。
鹿鳴館の華やかな様子などは赤と紫(ムラコ)で派手派手です。
こちらは衣装のアニリン赤が目を引きます。
(西洋の印刷技術が伝わると、大量印刷や写真が印刷可能となり錦絵は衰退の道へ・・・)

作品名:美人蛍乃遊園
製作年:1890年
サイズ:各37.0×24.8cm 大判錦絵三枚続
作者 :渡辺延一 1872〜1944

渡辺延一の師、楊洲周延は既に存在しなかった大奥を想像で三枚続きの美人画にしています。
華やかなイメージと四季折々の行事を重ねた40点の揃物。
御台所や奥女中の美しい衣装は着物好きの方必見の作品です♪
揚州周延は美人画も宮中画も戦争画も描いた絵師ですが、激動の時代を幕府方について戦った人でもありました。
(本作シリーズは当時の世情とは別世界のキラキラね)

作品名:千代田之大奥 ほたる
製作年:1896年
サイズ:大判錦絵三枚続
所蔵 :ポーラ文化研究所
作者 :楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)1838〜1912
出典 :国立国会図書館「NDLイメージバンク」
(https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/data/post-73.html)

こちらは遠くで蛍狩りをする人の姿が影絵の様に表現されており、遠近感があります。
手前の素敵な螢籠が漆黒と赤でポイント。
(各作品のお洒落な螢籠を見比べるのもおすすめ♪)
挿絵や口絵で活躍した水野年方は優しい色合いの美人画シリーズを次々と発表。
気品ある穏やかな画風。錦絵が終わりを迎えた後は日本画家となり多くの門人を育て、浮世絵と日本画への橋渡しを務めました。

作品名:三十六佳人撰 蛍狩 天明頃婦人
製作年:1893年
サイズ:35.0×24.0cm
所蔵 :ボストン美術館
作者 :水野年方1866〜1908


共にゲンジボタル

静かな清流に住むと言われる蛍、何処でも見られる虫ではなくなりましたね。
日本のゲンジボタルやヘイケボタルは水生昆虫ですが、海外の蛍は陸生昆虫が殆どです。
大きな木に集まって光る種もいて、まるでクリスマスツリーみたいな美しさ!
(水辺で飛ぶ日本の蛍はやはり風流なモノの一つなのね)
水墨画の蛍の『あはれ』は海外の方にも響いたでしょうか。

作品名:川縁の蛍 Fireflies at River’s Edge
製作年:1893年
サイズ:98.7×35.2cm
所蔵 :ロサンゼルスカウンティ美術館
作者 :塩川文麟 1808〜1877

参考文献:
「歌川国貞 これぞ江戸の粋」 日野原健司(著)太田記念美術館(監)
「国芳イズム—歌川国芳とその系脈」 練馬区立美術館(著) 悳 俊彦(監)

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