あっぷる de アート「心優しきゴッホ」
ゴッホらしい激しい色彩対比はなく、優しく温かい作品。炎の画家っぽくない?!
この絵の優しさは何処から来るのでしょう?
作品名:花咲くアーモンドの木の枝
製作年:1890年2月
サイズ:73.3×92.4cm
所蔵 :ゴッホ美術館(アムステルダム)
作者 :フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ) 1853~1890
手紙魔ゴッホ。全ては手紙を辿れば分かると言えるくらい。
吉報を受け取った喜びを弟テオに書き送り、
母親には、甥っ子誕生を祝って早速、アーモンドの花を描き始めたと送っています。
アーモンドの花咲く姿に生命の誕生を重ね、青空に喜びも広がっていく様子。
春のパステルカラーがぴったりですね。
(ほら〜某有名ベビー服もパステルカラー♪)
弟の息子誕生を祝って描く・・・
激しい画家の心優しい一面が現われた作品。
ゴッホの日本贔屓は浮世絵収集するほどでしたが、(弟のお金でね)
本作には浮世絵の影響とされる輪郭線が見られます。
花にも赤の輪郭線を少し入れており、効果的に引き締めています。
ゴッホ特有のうねりや渦巻く様子は控えめですが、本作では幹の曲面に表れています。
それがまた伸びていく枝の生命力のように感じさせます。(枝がムクムクしてるし〜)
生き方が下手だったゴッホは叔父と同じ画商の道に入るも失恋と挫折、
宣教の道に入るもこれまた挫折。
(真っ直ぐ過ぎる上に思い込み激しいの)
自分の生活に困るレベルまで人に施してしまったり・・・
(極端に行っちゃあ何かにぶつかる!)
「躓きばかりが人生さ」と言わんばかりの不器用な男ゴッホですが、
家族を持つことを夢見ていた様子。(娼婦と同棲するも父やテオに反対され解消したことも)
弟テオに息子が生まれ、しかも自分と同じフィンセントと名付けられて戸惑いつつも、
嬉しかったのでしょうね。(厄介な義兄と同じ名前・・・テオの奥さんって心広いわねぇ)
しかし、幸せのお裾分けに与れたのもひと時のこと・・・
画商となり生活費や画材費を援助してくれている弟テオにとって、自分の存在が負担なのでは?!と思い詰めます。
自身のバランスを更に崩すことに・・・
本作は短い生涯の最後の年に描かれた作品。
ゴーギャンとの諍いから自身の耳を切り落とした後、療養生活を送ったサン=レミで描かれました。
小康状態の時も、心身の状態が悪化する恐怖を思えば奇跡的な一枚かも。
実際、相当な我慢と労力が必要だったとしつつ、会心の作品だと残しています。(手紙魔だもん)
約半年後にはピストル自殺と短い一生を終えたゴッホ。(他殺、暴発と諸説あり)
認めてもらえる兆しもあったようですが、繰り返す発作や激情気質を考えると、
やはり我が身を燃やし尽くす運命だったのかも。
ゴッホの死後、何とテオも間もなく病死。
全てを兄が吸い尽くしたとも言えるでしょうし、客観的に見ればブレイクすると見込んだ画家に死なれてしまった事になります。
それでも、やはり兄弟愛は本物で死に際のゴッホの元に駆けつけています。
(兄弟のお墓は仲良く並んでいます)
絵はテオの奥さんヨーから息子へと受け継がれます。
この弟夫妻の息子がゴッホ美術館を作り、家族愛が伝わる本作も収蔵されているのです。
参考文献
「書簡で読み解く ゴッホ」 坂口哲啓(著)
「西洋絵画の巨匠 ゴッホ」 圀府寺司(著)
*おまけ*
アーモンドは桜より少し開花が早いそう。
左がアーモンド、右が桜ですが・・・やっぱり一緒に見えますよねぇ。
満開と満月は重なりませんでしたが、私は日没と桜を静かに眺めました。
あっぷるはうす近辺は、美しい景色があちこちに♪
(愛称説明)テオ→テオドルス ヨー→ヨハンナ