大阪国際文化協会

あっぷる de アート「お風呂大好き」

揺らめく色彩の中、お風呂に浸かる女性。
バスマットには可愛い犬がご主人待ちでしょうか?!

作品名:浴室の裸婦と子犬
製作年:19411946
サイズ:121.9×151.1cm
所蔵 :カーネギー美術館(米)
作者 :ピエール・ボナール() 18671947 

 

モデルは画家の妻マルト。神経症だったとされています。
日に何度も入浴する程、お風呂大好きだったマルト。
強迫観念からか、入浴中は症状が和らいだのか・・・(水浴とも)
大きな浴盤の中でのマルトを描いた作品もあるので、バスタブは夫からのプレゼントでしょう。
フランスはシャワー派が圧倒的多数で、今もバスタブ無しが珍しくないのだとか。
お湯は決まった量しか出なかったりします。
(猫足バスタブってお姫様仕様の贅沢品ってことかしら?!)

 

浴室の妻を描くのは「取り組む事は二度とあるまい」とこぼす程、苦心する事も・・・
それでも、何枚も描いたボナール。
本作は、お風呂シリーズ最終版♪
画家は妻の死の前年に描き始め、自身の生涯を閉じる前年まで筆を重ねました。
マルトの右足に沿ってバスタブが歪み、タイルは迫る様にカーブ。
見たままを描く写実主義の先を求めた美がここに?!
バスタブや光の揺らぎがそう表現させたのか、何年も見てきた思い出と混ざったのか、
マルトの体は揺蕩ってバスタブに同化寸前・・・
皆さんはどう思われますか?!

 

ボナールとマルトの結婚、何と出会って32年も経った50代後半なんです!
しかもマルトが本名ではないと結婚する時に判明。
本当はマリアで年齢もサバよみ。
どんな理由で本名も年齢も明かさなかったのか・・・
天涯孤独を装った理由は全くの謎。
(人嫌いで距離をとっていた?!)
長い間、正式に結婚せずにいたのも謎。
(気付いたら30年とかってありなの?)
(まぁ、当人達の自由ですが〜アムールの国だし♪
愛のカタチは夫々よね)

 

実は裏エピソードがあり、二人の結婚後、ルネという友人が浴槽で自殺しています。
親子程年の離れたルネと三角関係だった→浴槽の裸婦はルネなのでは?!という説があります。
マルトの入浴好きは以前からだったけど、お風呂シリーズを描き出したのはルネの自殺後というややこしさ!
(他の作品でルネは金髪だけど・・・何色塗るかは自由だし、ボナールが超寡黙男で分からないの←事実)
皆さんはどう思われますか?!(2回目♪)
ただ言えるのは、最終盤の本作が一番明るく色彩に溢れた浴室と裸婦なのです。

 

初期のボナールは『ナビ派』の一人とされ、『日本かぶれのナビ』『超日本的ナビ』と呼ばれるほど浮世絵や屏風に心酔。
油彩画・版画・ポスター等、様々な作品を残しています。
(ナビ派:ゴーギャンに影響を受け結成。秩序に従った画面構成や日本の装飾性が特徴。ナビはヘブライ語で預言者の意味。
メンバーは互いを○○のナビと呼び合い活動、各々の美を求め1900年に解散)

 

作品名:庭園の女達
製作年:1891
サイズ:各160.5×48cm

所蔵 :オルセー美術館(仏)
作者 :ピエール・ボナール() 18671947

こちらは屏風にするつもりが、4枚のパネル仕立てに変更された作品。
それぞれ別物として観ると縦長で掛軸の様です。
浮世絵由来の輪郭線、美人画に似た構図に市松(チェック)等の装飾模様。
当時のジャポニスム熱が伝わります。
(美人画の代表はコレかな↓あら、水玉レディと?!)

作品名:見返り美人図
製作年:17世紀・江戸時代前期
サイズ:63.0×31.2cm
所蔵 :東京国立博物館
作者 :菱川師宣 16??1694

 

ボナールはキャンバスをイーゼルに掛けず、壁に画鋲で留めて描くのも平気な画家だったそう。
マルトと頻繁に移動しましたが、南仏(カンヌの近く)が終の住処となりました。
浴室や鏡の前のマルト、テーブルの様子、室内風景には犬や猫もよく登場し『アンティミスト親密派』と言われました。
(外は世界大戦だったのですが・・・)
カラフルで温かみのある色が穏やかな時間(時にはまったりとした空気)を伝えます。
地中海の光が画面を鮮やかにしたのでしょう。
画家の目には一緒に年を重ねた妻の姿が映っていた筈ですが、どの絵もマルトは若いまま。
今もキラキラの色彩の中、おこもり生活です。

 

参考文献
BONNARD 新潮美術文庫34」 峯村 敏明()
「岩波 世界の巨匠 ボナール」 ギー・コジュヴァル() 村上 博哉()
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