大阪国際文化協会

あっぷる de アート「海を渡った花鳥」

頭が良い上に悪さもして嫌われるカラス。
真っ黒な姿から悪魔や魔物絡みのストーリーによく登場しますよね。
でも日本からは、こんな美しい版画も生まれました。
浮世絵版画の広重ブルーも良いけど、この夕焼け空も素敵です♪

作品名:雪の柳に烏
製作年:1904〜1913年
サイズ:36.9×19.2cm(大短冊)
所蔵 :中外産業
作者 :小原古邨 1877~1945

学校で習った版画って、①彫刻刀で版木を彫る。②色を塗って紙を置く。③バレンでゴシゴシ!ですよね。実は版画には様々な技法があるんです。

このカラスの羽には色を摺った後、羽の模様を彫った版木を下に敷き表面からゴシゴシ!『正面摺り』という技法が使われています。(羽部分に光沢が出る)
また、枝に積もった雪は、凹状の版木に表面を合わせ上からブラシ等で叩く『きめ出し』という技法が使われています。
裏から叩かれた状態なので表面は盛り上がります。(積もった雪の立体表現)
(100%平面ではない!)

本作は『妖怪』の著者、小泉八雲ことラフガディオ・ハーンの遺著『Japan an Attempt at Interpretation』の表紙に使われています。
日本の文化・風土を愛し帰化までした作家の遺著に採用とは〜(しみじみ)

こちらは今の時期にぴったりな水仙。雀より全体が茶色のカヤクグリは地味ですが可愛い小鳥。
夏の季語だそうですが、冬は単独で平地でも見られ、小さな虫や草の種を食べています。
古邨の観察眼と優しい眼差しを感じさせます。

藁囲いと水仙に茅潜
製作年:明治後期
サイズ:36.9×19.0cm(大短冊)
所蔵 :中外産業
作者 :小原古邨 1877~1945

さて、明治に入り浮世絵人気が陰りつつある中、このまま消えてはならじと頑張った版元がありました。
版元 大黒屋と小原古邨のタッグは緻密な花鳥版画を生み出すことに。
国内で版画が機械印刷に押される中、小原古邨の花鳥版画は海外で大変人気だったそう。

欧米のジャポニスムブームと日本の明治・大正は重なります。(日本は近代化を掲げ西洋を吸収)
(互いに「いいね!」を送りあった時代、古邨達の花鳥画も輸出される美になったワケね)

また、西洋を中心に流行したアール・ヌーヴォーは曲線が生かされ、植物や小さな生き物達が登場。
(エミール・ガレの花瓶やランプには菖蒲やトンボが♪)
日本の花鳥画が持つ自然観察、身近な自然への愛は海を越えて共感出来たのでしょう。
(浮世絵を集めた印象派やゴッホ達がいて、小原古邨の作品はクリムトのコレクションに仲間入り)

作品名:桜につがいの孔雀
製作年:明治後期
サイズ:37.0×19.4cm (大短冊)
所蔵 :中外産業
作者 :小原古邨 1877~1945

輸入された鮮やかな塗料が増えると古邨の作品も色彩豊かに♪(海外うけアップ!?)
関東大震災後、古邨の版画は「新版画」を提唱した渡邊版画店から出されました。
この頃、雅号は古邨から祥邨に。
肉筆画と変わらぬ繊細美は、彫師の寿命を縮めるとまで言われたそう。
作品の素晴らしさは古邨の版木下絵は勿論、彫師や摺師の技術あってこそ。(職人のプライドね)

作品名:雪中群鷺
製作年:1927年
サイズ:大判
所蔵 :個人蔵
作者 :小原祥邨 1877~1945

昭和になるとデザイン性が高まり現代的になったのを感じます。
写生で学んだモノ→削ぎ落とし洗練された線が生まれたのかも。
(雅号は豊邨に。版元 川口商会・酒井好古堂)

美術館等で版画に出会ったら、ぜひ角度を変えて鑑賞を〜
摺師の職人技術にも感動です。
きっと機械には出せない美が待っていますよ♪

参考文献
「小原古邨 木版画集」
「小原古邨の小宇宙」小池満紀子(著)

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