あっぷる de アート「実りの皇帝」
野菜・果物・花の寄せ集めで描かれた不思議な男の顔。
何と!これは神聖ローマ帝国皇帝の肖像画なのです。
普通、権力者の肖像画って威厳に満ちた、君臨する者のオーラを感じさせますよね。
重そうな王冠に錫杖とか、白貂の超長いマントとか、お召し物がキラキラ&ヒラヒラ等が定番。
(こんな風変わりな肖像画、よく不敬罪で牢獄送りにならなかったなと思うのですが・・・)
作品名:ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世
製作年:1590〜1591年
サイズ:68×56cm
所蔵 :スコークロステル城(スウェーデン)
作者 :ジュゼッペ・アルチンボルド(ミラノ) 1526~1593
ウェルトゥムヌスというのはローマ神話で果樹や果物、季節を司り様々な姿に変身出来る神様。
豊穣の大地全てを治めているとして、実りの神に見立てた皇帝を描いたのです。
50種以上の野菜・果物・花々で描かれています。
(決して、「おふざけ」が過ぎた作品ではなく、皇帝を讃えた絵だったのですね!)
よく観ると頰が左右でリンゴと桃で描き分けられていたり、細かな工夫に気づかされますよ。
肩から斜めに掛かる繋がった花はサッシュ(儀礼的な場面で掛けるリボン)の様にも見えます。
アルチンボルドは画家の父から絵を学び、親子でミラノ大聖堂のステンドグラスを手掛け、
他にも教会のタペストリー制作をして腕を上げました。
宮仕えの身となってからは、馬上試合の衣装デザインなども手掛けています。(なかなか多才です)
ハプスブルク家のフェルディナンド1世→マクシミリアン2世→ルドルフ2世と神聖ローマ皇帝三代に仕えました。
本作はミラノに帰ってからルドルフ2世に送ったもので、超美術コレクターであった皇帝を喜ばせ、
爵位まで与えられました。
(当時は変わった物を集めるのが流行ったそうですが、ルドルフ2世は幼い頃から自然と目を養い、
新しいものや良いものを認める感覚を持っていたのかも・・・)
アルチンボルドが『ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世』と共に献上した作品がこちら『フローラ』です。
作品名:フローラ
製作年:1591年
サイズ:73×56cm
所蔵 :個人(パリ)
作者 :ジュゼッペ・アルチンボルド(ミラノ) 1526~1593
2作品共パズルの様に器用に組み合わせるアイディアだけでなく、
たくさんの植物を1つ1つ確かな観察眼で描かれているのが素晴らしいですね。
お子さんと一緒にどんな野菜・果物・花が描かれているか、探してみて下さいね!
「これ食べたい♪」なんて言ってくれるかも・・・