大阪国際文化協会

あっぷる de アート「江戸っ子金魚と猫」

『火事と喧嘩は江戸の華』
カエルを先頭に金魚の町火消しが走っていきます。
「ここ、水の中じゃあないの?!」とか無粋なことを言ってはいけません。
ここは国芳の洒落に乗っかってこそ楽しめるというもの。
(翻る纏は水草で芸が細かいの♪)
カエルが「てぇへんだ!てぇへんだ!!」って叫べば、
金魚が「火元はどこでぇ?!」って怒鳴ってそうでしょ。
この後、長屋は延焼を防ぐためにバンバン壊されちゃう?!
描いた国芳は町火消しの兄さん達と仲良しで、火事が起こると自分もすっ飛んで行って手伝ったそう!

作品名:まとい-金魚づくし-
製作年:1842年頃(天保13)
所蔵 :ベルギー王立美術歴史博物館
作者 :歌川国芳 1798~1861
版元 :村田屋(中判錦絵)

本作は9枚まで確認されている連作で、江戸の風情が伝わります。
この頃には金魚も立派なペット。庶民を楽しませていたそうです。
国芳の洒落っ気と擬人化ワールド炸裂な作品です。
浮世絵なのに漫画みたいと思われるかも知れませんが、よくよく考えると、も〜っと以前に「鳥獣戯画」がありますもんね。
(日本人はミニ化とキャラ化が十八番よね?!)
中判錦絵というのは大判の半分サイズ。大判1枚を刷るサイズで中判2枚刷れます。
ということは・・・10枚目の江戸っ子金魚が見つかるかも知れません。

歌川国芳は日本橋の染物屋に生まれ、初代歌川豊国に弟子入り。
水滸伝ブームをチャンスとみた版元加賀屋とのタッグは30代で大成功。
「通俗水滸伝百八人之一人」シリーズで売れっ子絵師になりました。
描かれたヒーロー達の彫り物まで大ブームになったんだとか。

ところが、天保の改革で贅沢禁止が幕府より言い渡されます。
版元も絵師も困ったでしょうが、国芳はお上からの御達しなんて何処吹く風。
猫のように身をかわし、皮肉や洒落で乗り切ったのです。
こちらは遊女や旦那衆を猫に見立て遊郭の賑わいを描いています。(雀バージョンもあり)

作品名:おぼろ月猫の盛
製作年:1846年(弘化3)
所蔵 :個人
作者 :歌川国芳 1798~1861
版元 :伊庭屋仙三郎(団扇絵)

猫の足元を見ると板葺き屋根なので、猫の遊郭は屋根の上。
駕籠かきの背は猫の毛のような、彫り物のような・・・
提灯は「やまとや」ならぬ「にゃまとや」
着物の背の紋が魚だったり、柄が猫鈴に小判まで・・・(あら、ここでも洒落?!)

国芳は相当な猫マニアな絵師で、にゃんこモチーフ作品を多く残しています。
奉行所に何度呼び出されても、始末書を書かされても、罰金まで取られても!国芳は絵筆を止める事は無かったのです。
江戸っ子国芳の柔軟性と豪気を感じさせますね。
「ごちゃごちゃ言ってねぇで作品を楽しめってんだ」と声が飛んできそうです。

参考文献
「カラー版 国芳」岩切友里子(著)
特別展「江戸の戯画-鳥羽絵から北斎・国芳・暁斎まで」図録

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