大阪国際文化協会

あっぷる de アート「点々の未来」

今回は、小さな点で描かれた点描画をご紹介。
幅3m超えなのに、もうひたすら点々攻撃!
スーラは何で、こんな面倒な仕事を始めちゃったんでしょう!?

作品名:グランド・ジャット島の日曜日の午後
製作年:1886年
サイズ:207.5x308.1cm
所蔵 :シカゴ美術館
作者 :ジョルジュ・スーラ(仏) 1859~1891

色彩学や光学を取り入れたスーラは、理論に基づいて描いています。
①絵の具は混ぜていくと濁っていき黒に近づく。
②原色のまま並べると、視覚上で混ざる色は鮮やかなものとなる。
これを利用し、色をひたすら並べる点描画法を生み出したのです。
しかも並べる色は色彩調和論に基づいています。
(点々を並べるのって描いているというより、点を置くか打つ感じよね)

それにしても、この描き方では完成まで途方もない時間が掛かりますよね。
(額縁代わりに枠も点々だなんて正気の沙汰とは・・・いや、本当すごい熱量!)
しかも、スーラは本作に取り掛かるまでに、綿密な下絵を多く残しています。
これじゃあ食べていけなかったのでは!?と思われそう。
(でも、大丈夫〜実家はお金持ち♪)
売れなくても困らなかったのか、気の済むまで色彩を追求し、構図を練り直し・・・
残っている油絵の完成作は70枚に満たないのです。
理詰め作品の本作は2年も掛けて描いたそう。

グランド・ジャット島とはセーヌ川の中洲のこと。(今も渡って過ごせる憩いの場)
描かれているのは日曜の午後を楽しむパリっ子の姿なのに、何だか静かな感じの絵。
ボートを漕いだり、散歩したりしているのに動きゼロに感じられるのは何故!?
ほぼ横向き静止画像みたいですよね。
(筆に動きが無いとこうなるのか、分かっていて壁画風に単純化したのか)
白い服の女の子はこちらを見ているような・・・。

犬以外に薄らと猿がいますね。小さな猿を飼うのはステータスである一方、不道徳の象徴でした。
つまり、手前のカップルはワケありです。(だから一番日陰に描いたのかしら)
これらは当時のブルジョワ批判なんて意見もありますが、如何でしょう!?

計算し尽くされた本作は絵描き同士でも賛否両論。
光を自然に感じるままにキャンバスに写し取ろうとしたモネ達と、色を理論でキャンバスに乗せたスーラ。
印象派の「筆触分割」から、新しい美が生まれたわけです。
最後の印象派展に出品された本作が新印象派と呼ばれるのも意味深い。

批判の中には、立体的な人間は描けないのでは!?なんて声もあったそうで・・・
「失敬な!ちゃんとした所で勉強したぞ!」と言いたかったのか、こんな作品を発表。
わざわざヌードデッサンっぽいポーズで『グランドジャット〜』を左端に描くという芸当(画家の皮肉かも)

作品名:ポーズする女たち
製作年:1886〜1888年
サイズ:200x249.9cm
所蔵 :バーンズ・コレクション(フィラデルフィア)
作者 :ジョルジュ・スーラ(仏) 1859~1891

「よ〜し、躍動感あるモチーフにすれば動きも表現出来るはず!」と言わんばかりに、
こんな作品も残しています。
(点描手法も理論武装も捨てないの)
モチーフは弧を描き、単純な形が浮かび上がりそうな・・・
もうデザイン寄りでポスターに近いです。
スーラ最後の本作は未完のまま出品されました。

作品名:サーカス
製作年:1891年
サイズ:185x152cm
所蔵 :オルセー美術館
作者 :ジョルジュ・スーラ(仏) 1859~1891

スーラは内向的で寡黙な人だったそう。
31歳で病死しますが、妻子の存在をスーラの親も知らなかったのだとか。
(そういう事はちゃんと知らせようよ・・・)

手間暇かかる点描なんて、他に誰もやらなかったと思われますか!?
いえいえ、ちゃんと後の画家に影響を与えているんですよ〜
点描仲間には遺作を買い取ったシニャックがおり、スーラの死後も発展させてくれました。
(シニャックはスーラと真逆の社交派でゴッホとも交流)

作品名:マルセイユ港への入り口
製作年:1898年
サイズ:46.0x55.0cm
所蔵 :クレラー・ミュラー美術館(オランダ)
作者 :ポール・シニャック(仏) 1863〜1935

作品名:ゴッホの自画像
製作年:1887年
サイズ:42x33.7cm
所蔵 :シカゴ美術館(米)
作者 :フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ) 1853〜1890

パリに出て来たゴッホは二人の作品からも影響を受けています。
「点々攻撃とゴッホの筆跡では全然違うだろ〜」って!?
でもゴッホの絵に近付くと、荒々しいタッチ以外に原色のまま並べている事が分かります。
しかも補色対比の嵐!(ヤバイ人扱いが目立つゴッホも冷静に色彩理論を取り入れているのよ)
点々の未来はちゃんと線となり繋がっていったのです。(点々は報われた!)

お子さんと展覧会でスーラ達の点描画に出会ったら是非、少し離れて観て下さい。
どんな風に描いたのか、気の遠くなるような仕事を(気絶寸前!)近くで観るのは大事。
でも、下がらないと何を描いているか分かりません。
お子さんと近付いて観たり、下がって観たりを楽しんで下さいね。
これは、点描に限らずなのですが、少し下がる事で出会う美もあります♪
職場で視点を変える様に言われる事・・・ありますよね。
(絵を眺めてたら、仕事のアイディアが不意に閃くかも〜)

参考文献
「SEURAT」PIERRE COURTHION(解説)

Scroll to Top